自転車

自転車に乗っていると、「あれ、これってどうだっけ?」と交通ルールに迷う瞬間、ありませんか。特に「自転車の歩道逆走」については、気になっている方が多いかもしれません。

車道が怖いから歩道を走りたいけど、歩道の右側通行はもしかして違反で捕まるんじゃないか…とか。そもそも自転車は歩道のどっちを通行するのが正解なのか、あの青い丸の標識がある場所なら何をしてもいいのか、よく分からないことも多いですよね。

万が一、事故や違反をしてしまった場合の罰則や罰金がどうなるのか、最近話題のヘルメット着用義務についても、はっきり知らないと不安になるかなと思います。

この記事では、そんな自転車の歩道通行に関するさまざまな疑問について、私なりに整理したポイントをご紹介しますね。

記事のポイント
  • 歩道の「逆走」が法律上どう扱われるか
  • 自転車が歩道を通行できる3つの例外条件
  • 歩道を走る際に守るべき最も重要なルール
  • 違反した場合の罰則や事故のリスク

    自転車の歩道逆走は法律違反か

    まず一番気になるのが、「自転車で歩道を逆走したら、それって法律違反なの?」という点ですよね。この「逆走」という言葉が、実はちょっとした誤解を生んでいるかもしれません。法律上のルールを整理しながら、歩道の通行について見ていきましょう。

    歩道の右側通行は捕まる?

    歩道の右側通行は捕まる?

    結論から言うと、利用者が一般的にイメージする「歩道の右側通行(=車道の流れとは逆向きに歩道を行くこと)」自体が、直ちに「逆走」として罰せられるわけではないようです。

    私も調べてみて知ったのですが、法律(道路交通法)で厳しく禁止されている「逆走」というのは、主に「車道」の右側を通行することを指すんですね。これは道路交通法第17条4項の「通行区分違反」に該当します。

    これに違反すると、「3ヶ月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金」という、非常に重い罰則が科される可能性があります。これは、自転車も「車両」である以上、車道では絶対に守らなければならない根本的なルールです。

    一方で、自転車が通行を許可されている歩道においては、法律上「進行方向」は特に定められておらず、「相互通行が可能」とされています。ですから、道路の右側の歩道を通行すること自体が、車道と同じ「逆走」扱いになるわけではない、というのが現在の解釈のようです。

    ただし、これが「じゃあ歩道は自由に走ってOK!」ということでは全くないのが重要なポイントです。問題は「方向」ではなく、その「走り方」にあります。

    たとえ方向自体が違反でなくても、後述する「徐行義務」や「歩行者優先」といった、歩道を通行する上での厳格なルールを守らなければ、それはそれで別の違反として罰せられることになるんです。

    法律が定める自転車の通行区分

    そもそも、自転車は法律上どういう扱いなのかご存知ですか?

    道路交通法では、自転車は「歩行者」ではなく、「軽車両」という扱いです。つまり、基本的にはバイクや自動車と同じ「車両」の仲間なんですね。「軽車両」とは、原動機(エンジンやモーター)を持たない車両のことを指します。

    「車両」である以上、守るべき大原則があります。それは、「歩道と車道の区別がある道路では、原則として車道を通行しなければならない」というルールです。

    この「原則車道通行」という大前提が、自転車の交通ルールを理解する上で最も重要なスタート地点になります。歩道通行は、あくまで「例外」的な措置でしかない、ということですね。

    自転車は歩道のどっちを通行?

    自転車は歩道のどっちを通行?

    では、例外的に歩道を通行できるとして、その歩道の「どっち」側を通行すべきなんでしょうか。右側?左側?

    これも車道と同じで「左側通行」だと思いがちですが、法律が歩道に求めているルールはちょっと違いました。

    法律(道路交通法第63条の4)では、自転車が歩道を通行する際は、「歩道の中央から車道寄りの部分」を通行しなければならない、と定められています。(出典:e-Gov法令検索『道路交通法』)

    ポイントは「左右」ではなく、「車道寄りか、建物寄りか」という区分です。

    • OK: 歩道の「車道寄り」の部分を走る
    • NG: 歩道の「建物・商店寄り」の部分を走る

    これは、お店の出入り口などがある建物側を歩行者のスペースとして確保し、自転車と歩行者の動線をなるべく分けるためのルールのようですね。

    そしてこのルールは、道路の右側の歩道を通行する(いわゆる逆走状態の)時も同じです。その(道路右側の)歩道の中の、「車道寄りの部分」を通行する必要があります。

    普通自転車通行指定部分がある場合は?

    歩道によっては、路面に自転車のマークや矢印が描かれた「普通自転車通行指定部分」が設けられていることがあります。

    この指定部分がある場合は、その指定部分を通行しなければなりません。ただし、この指定部分もあくまで「歩道」の一部なので、歩行者優先の原則は変わりません。歩行者がいれば、徐行や一時停止が必要です。

    歩道通行可の標識と条件

    自転車 標識

    「じゃあ、どんな時に例外的に歩道を走っていいの?」というと、法律で認められているのは、以下の3つの条件のいずれかに当てはまる場合だけです。

    この3つの条件のどれにも当てはまらないのに歩道を走ると、それ自体が重い「通行区分違反」になってしまいます。

    1. 道路標識などで許可されている場合

    「普通自転車歩道通行可」を示す、あの青くて丸い標識(歩行者と自転車が描いてあるやつですね)や、路面表示がある歩道は、通行が許可されています。これが一番分かりやすいケースですね。

    2. 運転者の属性による場合

    運転者が以下の場合も、標識がなくても歩道を通行できます。これらは交通弱者を守るための規定です。

    • 13歳未満の子ども
    • 70歳以上の高齢者
    • 身体の不自由な方(※政令で定める基準に該当する場合)

    3. 「やむを得ない」状況の場合

    これがちょっと曖昧なのですが、「車道又は交通の状況に照らして(中略)やむを得ない」場合も許可されています。

    例えば、道路工事中だったり、駐車車両がずらっと並んでいて車道の左側を走るのが物理的に無理だったり、あるいは交通量がものすごく多くて道幅も狭く、自動車との接触の危険が客観的に見て非常に高い場合…といった状況が考えられます。

    ただし注意したいのは、これが「車道を走るのがなんとなく怖いから」といった主観的な理由だけでは「やむを得ない」とは認められない可能性が高いという点です。

    あくまで客観的な状況判断が必要なので、この「やむを得ない」状況だったかどうかは、万が一の事故の際に争点になるリスクがあります。「自分はやむを得ないと思った」というだけでは、法的に認められないかもしれない、ということですね。

    原則は車道の左側通行

    自転車 車道

    ここまで見てきたように、歩道通行はあくまで「例外」なんですね。

    自転車の交通ルールの大原則は、あくまで「車道の左側端」を通行することです。これは道路交通法第18条で定められています。

    もし、先ほどの3つの例外条件(標識、属性、やむを得ない状況)のどれにも当てはまらないのに歩道を通行した場合、それは「通行区分違反」となり、車道を逆走するのと同じ「3ヶ月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金」という、非常に重い罰則の対象になるんです。

    「歩道を走る」という行為自体が、実はかなり重い法的責任の上で、例外的に許可されているに過ぎない、ということは知っておく必要がありそうですね。

    自転車の歩道逆走のリスクと罰則

    さて、ここまでは「どこを走るか」という「場所」の話が中心でした。ここからは、「歩道の逆走」という行為が、なぜ危険だと言われるのか、その具体的な「走り方」のルールと、事故のリスクや罰則について掘り下げてみます。

    歩行者優先と徐行の義務

    歩行者優先と徐行の義務

    たとえ先ほどの3つの条件を満たして、法的に「歩道を通行OK」となった場合でも、その瞬間に自転車には重い義務が課されます。これは、いわゆる「逆走」方向でも「順走」方向でも、全く同じです。

    歩道通行時の絶対ルール

    1. 歩行者絶対優先
      歩道は歩行者のものです。自転車は「通らせてもらっている」立場。いかなる時も歩行者の通行を妨げてはいけません。
    2. 徐行(じょこう)義務
      歩道では「徐行」しなければなりません。「徐行」とは、「直ちに停止することができるような速度」のこと。具体的な目安としては、時速 8km~10km 程度と言われています。大人の早歩きくらいですね。
    3. 一時停止義務
      歩行者の通行を妨げそうになった場合、あるいは妨げるおそれがある場合は、必ず「一時停止」しなければなりません。

    つまり、歩行者が前方にいたら、その横をスピードを落とさずにすり抜けるのは完全なアウト。歩行者が自転車に気づいて道を譲ってくれたとしても、その時点で「妨げている」とみなされる可能性が高いです。法が求めているのは、自転車側が止まることなんですね。

    「徐行」と「一時停止」の具体例

    例えば、前方を歩いている歩行者に追いついた時、その方がイヤホンをしているなどで自転車に気づいていないようであれば、安全な間隔が取れるまで後ろをゆっくりついて行く(徐行)か、止まる(一時停止)必要があります。

    また、歩行者が「あっ」と気づいて脇に避けようとしてくれたら、それはもう「妨げている」状態なので、自転車は「一時停止」するのが正解、ということになります。「すみません」と会釈して通り過ぎるのではなく、止まるんですね。

    歩道でベルを鳴らすのは違反

    よく歩道で、前を歩く歩行者に対して「チリンチリン!」とベルを鳴らして道を空けさせようとする自転車を見かけますが、あれはどうなんでしょう。

    実は、あれも原則として違法(違反)です。「警音器使用制限違反」という違反になる可能性があります。

    ベル(警音器)は、道路交通法で「危険を回避するためにやむを得ない場合」にしか使ってはいけないと決まっています。例えば、見通しの悪い曲がり角で、どうしても衝突しそうな差し迫った危険がある場合などですね。

    歩行者にどいてもらうために鳴らすのは、この「やむを得ない場合」には当たりません。

    先ほどの義務を思い出してほしいのですが、歩行者に追いついたら自転車側がすべきことは、ベルを鳴らすことではなく「一時停止」することなんです。

    歩行者にベルを鳴らす行為は、法的な違反であると同時に、相手を驚かせたり、不快な思いをさせたりすることにも繋がりますよね。

    事故の危険性と過失割合

    ここが「歩道の逆走」と呼ばれる行為の、一番怖いところかもしれません。

    刑事罰(罰金)ももちろんですが、それ以上に重大なのが、事故を起こしてしまった時の「民事責任(損害賠償)」です。

    なぜ、車道と逆行する方向の歩道走行(いわゆる逆走)が危険かというと、他の交通参加者、特に自動車から「予測されにくい」からです。

    「歩道逆走」で起こりやすい事故パターン

    この「予測不可能性」が、事故に直結する典型的なパターンが2つあります。

    パターン1:駐車場や路地から出てくる自動車との衝突
    最も典型的なのがこれです。ドライバーは、車道に出る前に歩道を横切りますが、その際、意識は主に「車道の流れと同じ方向(=順走側)」から来る自転車や歩行者に向いています。まさか「逆走側」から自転車が(それなりのスピードで)突っ込んでくるとは予測していません。

    パターン2:交差点での左折車両との巻き込まれ
    いわゆる「逆走」状態で交差点に進入した自転車が、対向車線から左折してくる自動車と衝突するパターンです。左折するドライバーは、横断歩道の歩行者や、対向の「車道」を直進してくる車には注意を払っていますが、その視界の外側である「逆走側の歩道」から来る自転車は、まさに死角。発見が遅れ、巻き込まれる形になります。

    もし事故が起きた場合、「過失相殺」といって、お互いの不注意(過失)の割合に応じて賠償額が決まります。

    この時、自転車側が「歩道の逆走状態」であり、かつ「徐行義務」や「車道寄り通行義務」も守っていなかったと認定されると、自転車側の過失割合が非常に重く(不利に)算定される可能性が極めて高いです。受け取れる賠償金が大幅に減るどころか、自分が加害者として多額の賠償を命じられるケースも十分にあり得ます。

    違反した場合の罰則と罰金

    自転車の違反に対する罰則は、その内容によって重さが異なります。少し複雑ですが、整理してみると、「場所」の違反が重く、「方法」の違反がそれに次ぐ、という構造になっています。

    あくまで一般的な分類例ですが、以下のような違いがあります。

    罰則の重さ 違反の種類 具体例
    重い
    (3ヶ月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金)
    通行「場所」の違反
    (通行区分違反)
    ・車道の右側通行(完全な逆走)
    ・許可なく歩道を通行
    ・歩行者用路側帯(白二本線)の通行
    比較的軽い
    (2万円以下の罰金又は科料)
    通行「方法」の違反
    (安全運転義務違反)
    ・歩道での徐行義務違反
    ・歩行者妨害(一時不停止)
    ・(ベルを不必要に鳴らすなど)

    ※上記はあくまで法律上の規定の一例です。実際の適用は個別の状況により異なります。

    利用者が「歩道の逆走」と呼ぶ行為の中で、もし罰則を受けるとしたら、多くはこの「方法」の違反(徐行しない、歩行者を妨害する)に該当する可能性が高いかなと思います。

    最近は自転車の取り締まりも強化されていて、以前なら「指導警告(イエローカード)」で済んだものが、反則金(青切符)の対象になるケースも増えているようです。悪質な場合は「赤切符」が切られ、刑事罰(罰金や拘禁刑)として前科が付く可能性もゼロではありません。

    ヘルメット着用義務について

    ヘルメット着用義務について

    最後に関連して、ヘルメットについても触れておきますね。

    2023年4月1日から道路交通法が改正され、自転車に乗るすべての人にヘルメットの着用が「努力義務」となりました。

    これは「努力義務」なので、かぶっていなくても罰則や罰金はありません。ですが、法律が「努めなければならない」と定めたわけですから、単なる「推奨」よりも一段階強い意味合いがあります。

    万が一の転倒時に頭部を守るためには非常に重要です。警察庁などのデータでも、ヘルメットを着用していない場合の致死率は、着用時に比べて格段に高いことが示されています。

    特に、先ほどのような「予測されにくい」動き(歩道の逆走)をしてしまう可能性があるなら、事故のリスクは通常より高まっているわけですから、自衛のためにも着用が強く推奨されますね。

    自転車の歩道逆走の正しい知識

    ここまで「自転車の歩道逆走」について見てきました。私なりに情報を整理して分かったのは、法律的なリスクと安全上のリスクを分けて考える必要がある、ということです。

    今回のまとめ

    • 利用者が言う「歩道の逆走」(右側歩道の通行)自体は、法律上の「逆走」違反(3ヶ月/5万円)には直ちに当たらない。
    • ただし、歩道を通行するには厳格な3つの例外条件(標識・属性・やむを得ない)が必要。
    • それらを満たして歩道を通行する場合、方向に関わらず「歩行者絶対優先」「車道寄りを徐行」「妨害時は一時停止」という義務を負う。
    • この「方法」の義務違反は、罰則(2万円以下)の対象になる。
    • 最大のリスクは、刑事罰よりも事故時の民事責任。「逆走」方向の走行は自動車から予測されにくく、事故時の過失割合が非常に重くなる危険がある。

    私たちが取るべき安全な行動としては、やはり「原則(車道の左側端)」を走ることを基本と考えるのが一番良さそうです。

    もし、例外的に歩道を走らざるを得ない場合は、時速8km程度の「徐行」と「頻繁な一時停止」という法律上の義務を、文字通り実行する覚悟が必要です。それが難しいほどの交通量や歩行者の多さなら、最終手段として「自転車から降りて押して歩く」のが、最も賢明で法的に安全な選択と言えるかもしれませんね(押して歩けば「歩行者」扱いですから)。

    この記事で紹介した内容は、私なりに各種情報をまとめたものであり、法的な解釈や罰則の適用は、個別の具体的な状況によって大きく異なります。

    交通ルールに関する正確な情報や最新の改正については、警視庁などの公式サイトをご確認いただくか、最終的な法的判断については弁護士などの専門家にご相談ください。